私たちはAppleの反消費者主義、例えば部品のペアリングによる修理エコシステムの独占や消費者に対する心理的な陳腐化の觀念、連邦議会でついた嘘など、望ましからぬ企業行動ついて批判を重ねてきました。しかし、Appleは多くの希望が詰まったあるサービスを約束しました。つまり、セルフサービス修理プログラムの実施です。
M2 Pro SoCが搭載された14インチMacBook Proというアップグレードモデルの登場に伴い、Appleのセルフサービス修理プログラムの珠玉の1つであるM1 MacBookのサービスマニュアルを片手に、リペアビリティを念頭に置きながら、もう少し掘り下げた分解を行いました。それは、”旧M1の修理マニュアルを使って、新M2 MacBook Proを修理できるのか?”というものです。
先に結論を言っておきましょう: そうです、”その”修理マニュアルは使えます。
クラシックでハイクオリティなもの、もしくは古くて壊れているもの?
旧モデル用の修理マニュアルを新モデルにも利用できることは、驚くことでもなければ、悪いことでもありません。もちろん、製品の外観デザインを「刷新」すれば、人為的に売り上げを増やすことができます。これは、1世紀にわたるマーケティングリサーチが認めていることです。しかしヘンリー・フォードが大人気を博したT型フォードで証明したように、同じ製造工程を合理的に維持すればコスト削減につながる利点があります。
製品の不具合に対応することを除けば、同じ製造工程を維持するとコストを削減できるため、その分を消費者に還元することができます。見慣れたデザインが維持されれば、修理テックたちにとっても利便性が高くなり、利用可能な部品をプールできます。OEMは同じ部品を大量生産するだけでなく、サードパーティーメーカーにも部品製造の時間とインセンティブを与えることができます。さらに工場の工程管理システムを最小限に抑えることで、廃棄物や出荷までの時間を削減することも可能になります。つまり、多くのメリットがあります。
M1 MacBook ProとM2 MacBook Proは、製造工程がよく似ているようです。Appleに多くの利益をもたらし、消費者にはより低い価格が可能になります。そして私たちにとって最も重要なことは、発売から2年近くたった今でも旧モデルと同じ修理マニュアルを使用できることです。

Appleの修理マニュアルに対する私の印象はざっくりポジティブなものです。最初は162ページもある(!)その長さと膨大な数の警告のために、恐れおののきました。マニュアルのレイアウトに慣れて理解していくと、そのロジックが分かってきます。Appleの修理マニュアルは、そこに書かれている指示に注意深く従う忍耐力と時間があれば成功に導いてくれます。
違いを見抜く:M2 MacBook Proに加えられた変更点
M2搭載MacBook本体については、ロジックボードに変更点が限定されています。最も興味深いのは、M2 Pro SoCのヒートシンクのサイズが明らかに小さくなっていることです。M1と比較してM2 Proのヒートシンクは大きくないにしても、同じサイズのものを搭載しているだろうと予想していたので、その原因を調査することにしました。
SoCのシールドを外すと、サイズの違いの理由が一目瞭然です。M1 Proはコアの両側に8GBのSamsung LPDDR5 RAMモジュールを2つ、M2 Proはコアの片側にSK Hynix 4GB LPDDR5 RAMモジュールを2つずつ、両側合わせて4つ搭載しています。これらはM2 MacBook Airに搭載されていたものと全く同じRAMモジュールです。
Appleの供給制約によってRAMが縮小している?
SoCのサイズは変わりませんが、配置デザインが異なります。なぜこの新モデルでは、2つの大きなRAMモジュールの代わりに、4つのRAMモジュールを採用したのでしょうか。SemiAnalysis社のチーフアナリストであるDylan Patel氏に尋ねたところ「Appleがこの設計を選択したとき、ABF基板の不足は非常に深刻な問題でした。2つの大きなモジュールではなく4つの小さなモジュールを使うことで、メモリからSoCまでの基板内の配線の複雑さを減らし、基板上のレイヤーを少なくすることができました。この設計によって、制限された基板の供給量を伸ばすことができたのです。」という回答が返ってきました。

サプライの悩みはそれだけにとどまりません。AppleはRAMモジュールをより小さなパッケージに分割していますが、NANDモジュールについては逆の動向があります。14インチM1 MacBook Proでは4つの小さな128GBモジュールが搭載されていましたが、14インチM2 MacBook Proでは2つの大きな256GBモジュールへと変更されています。 M2 MacBook Airのベースモデルでも同様の変更があり、リードライトのパフォーマンスが大幅に低下し、14インチM2 MacBook Proのベースモデルでも再び同じことが起こっていると言われています。ベースモデルだけが、この20~40%のパフォーマンス低下に見舞われています。
どういう事でしょうか?Patel氏によると、このパフォーマンス低下の原因は、小型のダイが段階的に廃止されるため、それに伴い小型の128GBモジュールの入手が困難に、結果として価格も高騰します。それにより、業界全体がより密度の高いNANDダイにシフトしてきています。ならば次の質問が思い浮かびます。なぜAppleは512GBしかないモデルをわざわざ発売したのでしょうか?

下:M2 Proのロジックボード両側にNANDモジュールを1つづつ搭載
いずれにせよ今回の分解を通して、Appleが指示する修理方法について、非常に興味深い知見を得ることができました。
Appleのセルフリペアプログラムには、まだ大きな “しかし”が残っている。
もちろん誰もが気づいていながら、あえて口に出せない問題があります。それは部品のペアリングに関わる問題です。最新モデルでは修理可能な設計が増えているにもかかわらず、Appleが導入したソフトウェアロックによって、重要な部品が再利用されずに埋立地廃棄される運命にあります。愛用するデバイスの耐用年数は、Appleのハードウェアサポートの判断によって制限されます。サポートが打ち切られたデバイスは、ソフトウェアロックがかかった状態となり、サードパーティーのメーカーが交換部品を提供したとしても、その部品の機能は制限される可能性があります。
Apple公式の修理マニュアルを手に入れるまで20年という月日がかかりましたが、修理する権利の勢いは加速しています。私たちは、自分のものを修理する権利のために戦い続けます。それは携帯電話やノートパソコン、トラクターなど、どんな製品であれ、部品のペアリング問題に恐れず正面から取り組むことを意味します。
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